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繰延資産会計

このトピックでは、繰延資産とその会計基準を取り上げて説明します。

 

繰延資産とは

繰延資産(くりのべしさん、英:Deferred Assets)とは、将来の期間に影響する特定の費用のことです。

企業会計原則注解(注15)では、繰延資産として認められるために満たす必要がある要件について、以下のように記述されています。

  1. すでに代価の支払いが完了または支払義務が確定していること
  2. 役務の提供を受けていること
  3. 効果が将来にわたって発現すると期待されること

繰延資産は本来費用ですが、長期間に渡り効果があるので資産計上をします。会社法、税法それぞれで指定されていて、その種類に応じて任意償却、均等償却、強制的な定額法による償却など処理方法が定められています。

繰延資産の種類

繰延資産の種類は、会社法、税法上それぞれ指定が異なります。
「税務上の繰延資産」は、「会社法の繰延資産」と「税法上の繰延資産」を含みますが、会計基準上で繰延資産という勘定科目で計上できるのは「会社法上の繰延資産」のみであり、「税法上の繰延資産」は「投資その他の資産」に長期前払費用等として計上することになります。

 

会社法上の繰延資産

会社法上の繰延資産は、「企業の会計慣行」に基づいて次の5費用項目に限定されております。また資産計上しなかった場合には、支出年度に一括費用計上されることになります

上記の項目は原則は支出時に一括費用計上であり、繰延資産としての資産計上はあくまで容認規定であるため、早期償却を促すための償却期限の規定がおかれています。

種類償却開始時期償却期間償却方法表示場所
株式交付費会社成立後3年内定額法営業外費用
社債発行費社債発行後償還期限内利息法or定額法営業外費用
 (新株予約権発行費)新株予約権発行後3年内定額法営業外費用
創立費会社成立後5年内定額法営業外費用
開業費開業後5年内定額法営業外費用
開発費支出後5年内定額法一般管理費

税法上の繰延資産

税法上の繰延資産とは、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものといいます。

  1. 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
  2. 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
  3. 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
  4. 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
  5. 上記に掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

税法上の繰延資産は、税法で定める償却期間を基に毎期償却していくが、例外的に20万円未満のものは支出時の費用に計上することができます。

種類償却開始時期償却期間償却方法表示場所
1支出後共用施設耐用年数の70%に相当する年数
共同設備の場合5年(耐用年数がそれ未満の場合はその耐用年数)
均等法減価償却費 or 長期前払費用償却
2支出後建物の場合その建築物の耐用年数の70%に相当する年数
設備等の場合5年(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)
均等法減価償却費 or 長期前払費用償却
3支出後5年(契約年数が5年未満の場合はその契約期間の年数)均等法減価償却費 or 長期前払費用償却
4支出後資産の耐用年数の70%に相当する年数(耐用年数がそれ未満の場合はその耐用年数)均等法減価償却費 or 長期前払費用償却
5支出後5年均等法減価償却費 or 長期前払費用償却
 

研究開発費

試験研究費と開発費は、従来、繰延資産項目であったが、平成10年3月に制定された「研究開発費等に係わる会計基準」によって、新たに設けられた研究開発費に含まれるようになり、発生時に費用として処理されることになりました。なお開発費の一部は現在も繰延資産と認められています。

ソフトウェアの会計処理

区分会計処理
1.研究開発目的のソフトウェア⇒研究開発費として処理
2.研究開発目的のソフトウェア2.1.販売目的2.1.1.受注製作目的⇒請負工事の会計処理を適用する
2.1.2.市場販売目的⇒研究開発費部分と資産化部分に分かれる
2.2.自社利用目的⇒無形固定資産として計上

参考

外部リンク